南都屋根瓦ざんまい(6) [見てきたよ]
これも東大寺塔頭の1つに見られた門ですが、今回はこの門の屋根瓦に注目です。
まずは、軒平瓦・軒丸瓦です。平均的な本瓦葺きの軒端です。軒丸瓦の瓦当は
中心が巴文でその周囲を小さな珠文が取り巻く、中世以降によくあるものです。
留め蓋瓦です。飾りは狛犬みたいな感じです。こういうの、確か、わが甲府城跡でも
出土していたような・・・。
門の屋根の棟を観察しました。いろいろなパーツからできているようです。
そしてそのパーツ一つひとつに名称がありました。深いなぁ~。
なんと屋根瓦ざんまい(番外) [見てきたよ]
エートマンは、このほど古都・奈良に出かけましたが、その目的はけっして
屋根瓦の観察ではありませんでした。だけどです。デジカメからPCに移して、
旅のようすを振り返っていると、屋根瓦がいっぱい、まさに「ざんまい」という状況です。
ま、そればかりではありません、と言い訳を申しつつ、まだ少し、「屋根瓦ざんまい」
続きます。ご辛抱を・・・。
ちなみに今回の写真は、東大寺境内、正倉院から二月堂に続く小径沿いの
塔頭を囲む築地に開いた門や本堂の屋根を見たものでした。
南都屋根瓦ざんまい(5) [見てきたよ]
前回の記事の2つめの画像を再度とりあげました。この画像の左半は前回の記事の
中心テーマの大仏殿回廊についた門の屋根ですが、今回は同じ画像の右半分に注目します。
右半分は大仏殿の建物ですが、上方の大仏殿の大屋根と下層の裳階の屋根とでありますが、
今回の話題は、下の裳階部分の屋根での瓦の話です。
その部分をクローズアップしました。
裳階部分の本瓦葺きの屋根の中ほどに、平瓦を並べてのせているのが注目されました。
こうした瓦の設置目的は、大屋根の雨落ち部分に一枚平瓦をのせることで
上から落ちてくる雨垂れの衝撃を緩和することだと思われますが、そうした瓦の名称、
何ていうのかわからないのです。ネットなどで見てみると、いろんな言い方がでてきます。
「雨受け瓦」「雨落ち瓦」「置き瓦」「捨て瓦」などでありました。
ともかく、こうした大仏殿のような上が大きな屋根で、そこで受けた雨が下層の屋根に
落ちていくような場合、落下する雨の力は相当なもののように考えられますので、
ちゃんと対策を施して建物を長持ちさせている、世界的に見て多雨な気候域にある
日本の伝統建築ならではのものと感じ入りました。
南都屋根瓦ざんまい(4) [見てきたよ]
あらためて大仏殿の周囲を囲う回廊です。東側回廊の中ほどに門がついていました。
今回はこの回廊の門の屋根瓦を観察です。
切り妻の屋根で、妻入りとなっています。切り妻の屋根の端にそって、降棟が見られます。
門に向かって右手の降り棟の先端部を見ました。背後に大仏殿本体が見えています。
降棟の先端の鬼瓦の前に、留め蓋瓦が見られます。ちょっと怖くて、ちょっと
ユーモラスな首を持ったスッポンのような飾りのある留め蓋です。
妻の部分に並ぶ軒丸瓦ですが、中央の梵字を囲んで「大仏殿回廊」の5つの文字が
配されていました。
大仏殿本体には本体の、回廊には回廊の瓦が焼かれて乗せられていることがわかりました。
南都屋根瓦ざんまい(3) [見てきたよ]
奈良・東大寺の大仏殿院の東側から、回廊と回廊越しの大仏殿を見ています。
今回は特に大仏殿の屋根を観察です。まずは大棟の端に燦然と輝く鴟尾に注目。
古代の貴人が履いたくつの形に似ているので沓形(くつがた)とも呼ばれるそうです。
続いて隅棟です。一の鬼と二の鬼が重なるように見えています。
一の鬼瓦の眉間の辺りにクローズアップです。鬼面の眉間には宝珠が表されています。
また目玉の上に表現される眉毛の筋の表現は、単なる筋ではなく、ヘラを細かく使った
押し引きによる施文になっていますが、中世以降の装飾瓦の細工によく見られる技法ですね。
一の鬼瓦の先につく隅丸瓦には、一文字ずつを丸で囲んだ「東大寺大仏殿」の6文字が
中心の梵字を囲むように配されています。
真ん中の梵字は「ア」で、これは一般的には大日如来を意味するものとされていますが、
東大寺の大仏さまは「毘盧遮那仏」、なぜ「ア」なんだろうと考えてしまいました。
調べてみると、大日さまも毘盧遮那さまもサンスクリットでは、ほぼ同じ語
となっているため、ここでは「ア」が毘盧遮那仏を意味していると考えられました。
ところで真ん中に見える隅丸瓦の背後左手ににゅっと小さな顔が出ていますが、
それって何でしょうね。ちょっとおサルさんに似ている・・・。
おそらくは、大仏殿の構造が大きいため、それに合わせて配置される隅丸瓦と
一の鬼瓦との間に開きがあって、雨仕舞が悪くなるのを防ぐために、留蓋のような
飾り瓦が乗っているのではないかとみられます。
こうしてじっくり見ると屋根瓦の世界、深いものがありますね。
軒平瓦と軒丸瓦の組み合わせによる大仏殿の屋根の軒先ですが、こちらでも
軒丸・軒平ともに「ア」を中央に据え、「東大寺大仏殿」の6文字が配されています。